大衆床屋に髪切りにいったら客に親父がいた。

それも、入り口正面の台ですでに散髪中で
ガラッと入り口を開けた瞬間、鏡の中の親父と目が合う始末。
・・・5秒くらい固まった後、俺はスッと戸を閉め踵を返した。
なんてシチュエーションだ。なんてシチュエーションだ!!
このまま帰りたかったがふと振り返ると、店員さんがおい!空いてるよ空いてるよと
いうようなジェスチャーを入り口前でやっていたのでしぶしぶ中に入る。

親父の方はまったく見ずに促された台へと座り
適当に希望髪型を伝える。
しかし、なんなんだよ本当に。
なんともいえない羞恥心が胸を覆ってくる。
風俗店に行って出てきた女の子が実娘だった、または海外旅行してる時に
前から日本人が歩いてきたというような種のものだろうか。
そんなこと考えてると、俺の髪を切ってたババアが仕事何してるの?
と聞いてきたのでまあ今は特に何もハハ、と言うと
そーなの?親のスネかじってるのねギャウギャウとババアは誹り笑った。
普段の俺ならはっはっと軽く流し、心に波一つ立てないが
親父がすぐ近くで髪切ってるというこの状況だとまさにタイフーンだった。

俺は前髪と横をちょこっと切ってもらっただけなので
親父より早く散髪が終わり、また親父の方を見ず店を出た。
・・・というよりあれは親父だったのか?
実はよく似てるだけの他人だったのでは!?
俺の親父はネオニート、まあ定年退職して仕事してないので
平日の昼間に散髪してもなんらおかしいことはない。
しかし、街に何十件とある散髪屋で、年に2回くらいしか散髪しない俺が
偶然親父と出会うなんて生涯を通じても確率的に1%も満たないんじゃないか!?


そう思いながら家に戻ると、頭がスッキリした親父が居た・・・