また明日からあの薄暗くてうるさく、油の匂いが充満した
工場に缶詰となる日々だ。
しかも今週は土曜まである。
心と身体が日常に追いついてない感じがする。
ハードに鉄削りに励み、ようやく今週を乗り切ることができた。
この会社、金曜日は‘ノー残業デー‘と定めているらしく
ほとんどの人は定時の午後5時に帰っている。
つまるところ、残業に怯えるのは残り月火水木の4日でいいんだな。
徐々に、今後の俺なりの見通しが立ってきつつある。
先ばかり見てると、‘今‘に足元をすくわれる危険はあるが
何かいい未来を思い浮かべて過ごさないとやってけない。
不良品を出してしまった。
俺の仕事は自動車や農作機具、その部品をNC旋盤という大型切削機械で
加工するというものだ。
詳しくは分からないが、おそらく大手自動車メーカーやクボタといった
会社に卸しているんだと勝手に推測している。
そのせいかは分からないけど、やたら精度に厳しく0,001mでも
規格から外れてたら不良品となる。
規格とは寸法の事なんだけど、厚さ5mのものを完璧に良しとして
その誤差が定められている。
それが0,00mというミクロな世界なので、いかに正確な寸法を削る切削機械を
用いるとはいえ狂いが出てくる。
それを微調整するのが機械工の役目なんだな。
何事も大ざっぱなこの俺、この仕事向いてないんじゃないかと
思い始めた。
残業:2時間
今日もひたすら8時間鉄を削り、寸法を測って終わった。
未だ一人で作業を任されず、先輩社員と一緒にやっているので
俺はいつになったら一人立ちできるのだろうかと少々不安になってる。
お前覚え遅えんだよ!死ねよ!!なんて暴言を吐かれるワケじゃなけど
ちょっとした注意というかアドバイスみたいなのを度々受ける日々なので
毎日しんどい。
1日中工場内で鉄を削って機械を扱ってると
ふと、どうしようもなく外にでてどこかしこに飛び出したくなる時がある。
夜9時か。
残業が2時間もあると家にたどり着いて
一息し、シャワーを浴びるともうこんな時間だ。。
何が楽しくて10時間もあんな油と騒音に塗れた工場に居なきゃ
いけないんだと自分の人生に疑問を持ってしまう。
残業:2時間
はぁーあ、やっと今週の勤務も終わってくれた。
入って一か月ほど経ったが、未だ一人で作業できず
ハイハイと頭を垂れながらやってるので気疲れが大きい。
それでいて0,001mmというミクロンの寸法を扱うので調整や
測定に神経を使うしさらに単純作業、おまけに力仕事でもある。
書き出すとまるでいいとこねーな。
俺はこの会社で、自動車の部品などを加工してるんだが
昨日から違う部品の加工を習っている。
NC旋盤という、中にプログラムを組み込まれた大型切削機械に
ワーク(加工物)をセットして起動し、それを1日延々と繰り返す。
定時間近、今日残業できるかと問われたが
煙草を家に忘れて早く一服したいので帰りたいと告げ
帰った。
出勤時、いつも朝礼する場所に行くと人が沢山集まっていた。
この会社はいつも月の初めに、全従業員が集まり業績や抱負などを
役員クラスの人がみなの前で話すようだ。
途中、表彰のようなものがあって、俺がいつも仕事を教わってる人
が前に呼ばれた。
工場用語か分からないが、‘5s‘という掃除や整理整頓がしっかりしている
場所が表彰されるらしく表彰状と金一封を受け取っていた。
俺もこの場所に所属しているらしく、1000円貰った。
3月までの5sだったので俺はまったく貢献してないんだが
有り難く頂戴した。
残業:2時間
この会社に勤め始め早20日。
初めて残業要請が俺に下った。
なんだろう、腰に続き肩に違和感が・・・。
残業:2時間
昨晩は飲酒を控えた。
1日寝込んだおかげで大分良くなったとはいえ、まだアセトアルデヒドの
残党が身体に残ってるのを感じたからな。
酒を一滴も飲まない日なんてタクシー運転手やってた時以来かもしれない。
仕事の方は3日目になるが相変わらずだった。
俺がいても居なくても別に業務はなんざ滞らないような。
全身がバキバキだ。
インスタントコーヒーに湯を注ぐため
電気ポットを持ち上げるのも気合いがいるほどの疲労具合。
土曜日曜は休みなのでこの週末でなんとか回復させるしかない。
木曜からの勤務開始で助かったぜ。
こんな感じだが今回の仕事、俺としては珍しくできるだけ長く続けたいと思っている。
なんというか規則正しいんだよな、1日の勤務が。
東京に出てきてこの1年あまり新聞配達、宅急便、コンビニと仕事を跨いできたが
どの仕事も勤務時間や休憩時間がバラバラで曖昧だった。
ここは朝8時から勤務が始まり10時から10分
12時から40分、15時から10分としっかり休憩時間も
決まっており、工員の人達もその時間が来たらピタッと持ち場から離れる。
あと少しで1個完成するからこれまでやるか、なんてことしない。
さっさと近くにある椅子に座って己が体力を温存するのだ。
あと、会社の雰囲気も悪くない。
みんな一定の距離を保ってるというか、みんな仲良くという感じじゃなくて
黙々とこなしてる。
昼休憩では弁当が出て、大部屋の食事場に集まりみんなで食べるんだが
強制じゃないので自分で用意すれば、下手すると朝の朝礼から終業まで
自分の作業持ち場から一歩も離れず1日を終わらせる事も可能なのかもしれない。
まぁまだ2日しか勤務してないのではっきりとは分からないが
そうだったらウキウキしてくるな。
勤務初日から土砂降りの雨。
まったく先が思いやられる。
びしょびしょで会社に着くと先週、会社案内をしてくれたおじさんに
作業服を渡され、ロッカールームへと案内された。
この人はこの会社の部長さんらしい。
着替えた後、事務室に行き同じく部長さんにこの仕事における
就業の心構え等を聞かされ、別の人との座学に入る。
1年半ほど前に訓練校で習ったノギスやマイクロメーター。
これらを使って品物の寸法を計測するものだった。
まさか再びこいつらを手にすることがあるとはなと
感慨深い思いに耽りつつも、特に問題なく2時間弱の座学が終わった。
金以外、何も得るものが無かったと思っていたが案外計り方や
メモリの読み方などは覚えていた。
午前11時、座学も終わり作業場へと案内される。
NC旋盤、マシンオペレーターを使って鉄をガンガン削る様を小一時間
見学して昼休憩。
午後からは作業の一部を任せられた。
NC旋盤で削られた宇宙船のような円盤系の鉄の塊の外径を
特殊な計測器で、誤差0.1mm以内かどうかを計った後
マシンオペレーターにインパクトレンチでガガガッとセットして起動するという流れだ。
円盤系鉄の塊は15キロほどあり、誤差も0.1mm以上あるんじゃないか!?
という物もあったがとりあえずこの一連の流れを
4時間、10分の休憩を挟んで延々とやって午後5時勤務終了。
こいつは・・・きついぜ。